国連開発計画 
(UNDP) スーダン 

青年ボランティア
 ダルフール平和復興
支援プロジェクト

第1・2・3フェーズ

ダルフール総人口のうち、15-24歳までの青少年層は19.7%を占め、若年層の失業率は、40%を超えると推定されています。このダルフールの若者たちは、10年以上続くダルフール内の紛争により、教育や開発の機会を奪われてきました。若者たちは、コミュニティの発展や平和構築の大きな担い手となる可能性を持っていますが、同時に、貧困生活を強いられている現状においては、暴力や犯罪に手を染め、コミュニティをさらに不安定にするという危険性も持ち合わせています。

都市近郊または農村に住む、貧困下にある若者、特に読み書きのできない若者にとっては、農業や小規模ビジネスの起業が安定した生計手段となりますが、ダルフールでは、仕事の道具や技術、金融、市場へのアクセスが非常に限られているのです。

国連開発計画 (UNDP) スーダン事務所は、緊急人道支援と、中・長期的開発の足掛かりとなる復興開発支援とのギャップを埋めながら、国内避難民(IDPs)、帰還民、紛争被災コミュニティの強靭性と自立性を養う支援をしており、2012年より、ダルフールの若者を開発の中心に置いた画期的なプロジェクト、「青年ボランティア・ダルフール復興プロジェクト」を牽引してきました。

青年ボランティア・ダルフール平和復興支援プロジェクトでは、若者たちへのエンパワーメントを行い、彼・彼女たちの可能性を引き出し、発揮させ、上記の問題に対処していきます。

第1・第2フェーズの青年ボランティア・ダルフール復興プロジェクトでは、ダルフールの大学卒業者を対象にビジネスと環境に関するトレーニングを行い、その後、訓練修了者をダルフール復興のための青年ボランティアとして、地域コミュニティへ派遣しました。青年ボランティアは、紛争や貧困のため十分な教育やトレーニングを受けられなかった地域の人々に、研修で学んだビジネススキルや環境学の知識を指導し、地域の生計改善に取り組んできました。

第1フェーズ及び第2フェーズ終了後、これまでの成果と教訓を活かしてプロジェクトを改定。新たに平和構築や若者雇用・起業支援に関する活動を追加し、第3フェーズより「青年ボランティア・ダルフール平和復興支援プロジェクト」と改名して2017年に再始動しました。

このプロジェクトでは第1フェーズの段階から、ダルフールの大学や州政府と提携し、青年ボランティア組織を設立しました。これはスーダン政府の25か年開発計画目標の一つである「民間セクター開発につながるボランティア組織の設立」の実現にも寄与するものです。

プロジェクトアプローチ1
青年ボランティア訓練

南ダルフール州での訓練風景 Photo: UNDP Sudan

青年ボランティア・ダルフール平和復興支援プロジェクトは、ダルフールの大学と協力し、ダルフールの大学卒業者を対象に、4週間にわたり、ビジネス、環境、平和構築に関する研修を行います。

研修では、マイクロファイナンス(小規模金融)、起業理論、環境配慮型ビジネス、環境資源活用技術等に加え、ボランティアリズム、ジェンダー学、紛争解決予防など、コミュニティ開発に従事するボランティア として必要な科目も学びます。

「私たちの村では多くの助けを必要としており、今回青年ボランティアとして働けることは、大変貴重な機会だと思います。

また、若者のひとりとして、ダルフールのために貢献したいと考えており、訓練で学んだことを、村の人々にしっかり伝えていきたいです。」

第3フェーズ・東ダルフール州
青年ボランティア
スアード・ワディさん
東ダルフール州の青年ボランティア(Photo: UNDP Sudan)

プロジェクトアプローチ2 
コミュニティ活動

Photo: UNDP Sudan

研修修了後は、青年ボランティアとして、各自の出身地に派遣され、コミュニティ活動に従事します。

派遣地において9か月間、研修で学んだビジネススキルや環境学の知識を地域の人々に指導するとともに、コミュニティグループによる預金や貸付などの金融システムの設立や、小規模な起業に必要な補助金申請のためのビジネスプラン作成を支援します。

プロジェクト成果1
生計向上

コミュニティにトレーニングを行う青年ボランティア  Photo: UNDP Sudan

長期化の一途をたどるダルフール紛争により、特に地方の紛争被災コミュニティには、多くの国際援助機関がアクセスできず、十分な支援が行き届いていません。しかし、同プロジェクトでは、地元の若者の能力を活かすことによって、通常支援が届かない遠隔地を含め、かつてない規模でダルフールの紛争被災コミュニティへの生計向上支援を行うことができました。

第1フェーズから第3フェーズの間、445人の大学卒業者に訓練を行い、その内379人(うち40%が女性)が青年ボランティアとして選ばれ、
ダルフール全5州の中のコミュニティに派遣されました。

これまで、合計3万5862人(うち54%が女性)が青年ボランティアから研修を受けました。これは、ひとりあたりの青年ボランティアが、94人にビジネス・環境資源管理研修を行ったこととなります。

また研修には、女性や若者を優先に、幅広い年齢層の地域住民が参加しました。受講したコミュニティの人々は、学んだビジネスや環境資源管理の能力を活かし、それぞれの生計改善および、農業生産向上に役立てています。

さらに、青年ボランティアから訓練を受けたコミュニティ受益者の中には、ビジネスプランを作成し、プロジェクトの助成金制度に応募した人もいます。選考の結果、448のビジネスプランに助成金が授与され、受賞者は、農業、工芸品、養鶏、鍛冶業等、それぞれ新たなビジネスの立ち上げに成功しました。

第3フェーズでは、コミュニティ開発プロジェクト助成金制度も導入し、ダルフール5州における30コミュニティより、開発プロジェクトプランを応募しました。

選考の結果、11のコミュニティ開発プロジェクトに助成金が授与され、コミュニティにおいて学校や診療所、市場の整備・修繕が行われました。

この過程において、青年ボランティアは地域のリーダーと協力し、地域の合意形成及びプラン作成を牽引しました。遠隔地へのアクセスに加え、青年ボランティアが地域の一員であり、各地域の方言や文化を理解していることで、地域内のコミュニケーションが円滑に行われ、支援活動が効率的に行われています。

プロジェクト成果2
平和構築

Photo: UNAMID

2017年の国際平和デーを記念し、青年・平和・安全に関する国連安保理決議2250のワークショップをダルフール各5州で行い、続けて、ダルフール地域会議も開催しました。

ワークショップ及び地域会議は、ダルフール州の青年スポーツ省及び国連・アフリカ連合ダルフール派遣団(UNAMID)、国連人口基金(UNFPA)、国際連合児童基金(UNICEF)、NGOと連携して開催され、220人以上の若者、政府・国連・NGO関係者が参加しました。

ワークショップ及び地域会議では、国連安保理決議2250の説明が行われた後、参加者はダルフール各州及び全地域における若者と平和に関連する問題について討論しました。

ダルフール地域会議では、若者の雇用問題が、若者と平和に関する最大の脅威と位置づけ、参加者は、期限及び責任団体名を明記した改善計画を作成しました。会議の結果、南ダルフール青年スポーツ省では、この改善計画を、2017-19年における南ダルフール州政府方針に組み込みました。

さらに、コミュニティ間における平和構築を促すため、紛争解決トレーニングを84名の若者及び90名の青年ボランティアに対して行いました。

トレーニングを受けた若者たちは、ダルフール5州、30地域にユース平和環境クラブを設立し、平和構築イベントを各地域で行っています。

30地域を対象とした調査では、青年プロジェクトの平和構築活動により、地域の結束力35.7%から93%強化されたという調査結果が出ました。

プロジェクト成果3
若者雇用・起業支援

若者起業チャレンジ―"Start and Manage Your Own Business (SMYOB)"  challenge 発表会風景 Photo: UNDP Sudan

さらにプロジェクトの一環として、ダルフールにおける若者の起業支援を目的に、「若者起業チャレンジ―"Start and Manage Your Own Business (SMYOB)" challenge」を開催しました。

ダルフール全5州より、3392名若者がビジネスププランを作成し、この大会に参加しました。第1段階では、190名の若者が個人・団体として作成した150ビジネスプランが予選を通過しました。

選考においては、ビジネスプランの市場調査や予算、及びイノベーション性と持続可能な開発目標(SDGSへの貢献度が、特に重要視されました。

本選では、予選通過者によるビジネスプランの発表が行われ、UNDP, 州政府、NGO関係者及び金融機関代表から構成された審査員により順位がつけられ、順位に応じた助成金が授与されました。ビジネスプランの発表では、審査員によるアドバイスもあり、受賞者の起業を後押ししました。

「若者起業チャレンジの受賞者となったことで、夢が現実となりました。
現在は、妹たちも私の事業を手伝っており、家族全員の役に立っていることがとても嬉しいです。」

若者起業チャレンジ受賞者
ブライダルショップ経営
モニーラ・アブダッラさん
ブライダルショップの商品を見せるモニーラ・アブダッラさん Photo: UNDP Sudan

青年ボランティアの雇用支援のため、青年ボランティアの9か月の任期修了時には、表彰式とキャリアフェアを開催しています。各フェーズにおける表彰式及びキャリアフェアには、政府関係者、国連及びNGO関係者、さらにスーダン国内の企業関係者が参加しています。

2018年4月現在、379名の青年ボランティア経験者のうち、204名(うち39%が女性)が、政府機関や国連機関、NGOの職員や、個人事業主として活躍しています。

若者・ボランティア支援

Photo: UNDP Sudan

プロジェクトでは、ダルフールの平和と発展に向けた若者とボランティア活動の重要性を広く訴えています。

毎年8月12日に行われている国際青少年デーには、2015年から、政府機関、NGO及び他の国連機関と協力し、毎年記念行事を行っています。

2015年・2016年には、ラジオ討論会、環境キャンペーン、地域の祭り、持続可能な開発目標(SDGs)、貧困及び差別についての啓発活動、ダルフールの平和と発展における若者の役割についての討論会等が行われました。

 2017年には、暴力的過激主義の防止を目的に作成されたUNDP公式ショートフィルム「イマーン-IMAN」の上映会を行いました。

2013年、2015年と2016年には、12月5日に行われる国際ボランティアデーにあわせ、国連・アフリカ連合ダルフール派遣団(UNAMID)、国連ボランティア計画(UNV Programme)及び政府機関、NGOと協力し、ゴミ拾い活動を実施しました。ダルフールの各地域から約1500人がごみ拾いに参加し、ボランティア活動の推進を呼びかけました。 

2017年には植林活動を北・南・東ダルフール州で行い、約3000人の若者やコミュニティの人々が参加しました。植林活動では、ダルフールにおける環境保全や砂漠化の予防が訴えられました。

上記の活動を通して、部族やコミュニティが異なる若者たちが団結し、ダルフールの平和と発展に向けた若者とボランティア活動の役割を推進する機会ともなりました。

さらなる発展へ 
プロジェクト第4フェーズ

Photo: UNAMID

青年ボランティア・ダルフール平和復興支援プロジェクトは、以下のご支援を得て活動をしています。

第1フェーズ/第2フェーズ:韓国政府、国連ボランティア計画

第3フェーズ:日本政府

第4フェーズ:韓国政府

2018年に新たに始動した4フェーズでは、200人のダルフール大学卒業生をダルフール5州50地域に派遣し、地域住民1000人を対象に活動する予定です。

また、UNDPのプロジェクトチームには日本人職員が勤務しており、第1フェーズから第3フェーズまでは日本人の国連ボランティア(UNV)も勤務していました。同UNVスタッフは、UNVとJICAとの提携による国連ボランティア特別枠によって派遣され、派遣にかかる費用は、JICAによって負担されました。

青年ボランティア・ダルフール復興プロジェクトに関する、その他の記事はこちら:

国連開発計画 (UNDP)スーダン青年ボランティア・ダルフール復興プロジェクト・第1フェーズ 

国際青少年デー2016・ダルフール
UNDPスーダン青年ボランティア・ダルフール 復興プロジェクト

UNDP スーダンホームページ

プロジェクトに関するお問い合わせはこちら:

John Anodam, Programme Manager
UNDP Darfur Livelihoods and Recovery Programme, UNDP Sudan john.anodam@undp.org (英語)

UNDPスーダン事務所 ダルフール生計支援&復興プログラム
プロジェクトアナリスト 天野裕美
hiromi.amano@undp.org (日本語)


編集:
UNDPスーダン事務所プロジェクトアナリスト 天野裕美,
ユースボランティア・コーディネーター(当時)備瀬千尋